研究概要 |
最近の分子生物学の進歩により癌の分子生物学的側面が明らかになるにつれ、各領域の癌の遺伝子的な検討が始められている。DNAチップは、数百から一万種類以上に及ぶ遺伝子に対応するDNA断片を、顕微鏡スライドガラス等の基盤上に、微少量づつ整列・固定化したもので、どの遺伝子が働いているかがコンピューター上で同時にモニター可能であることから今後の癌の診断、治療への応用に期待されている。本研究では頭頚部扁平上皮癌の遺伝子発現の特徴を明らかにするために、ヒト由来の既知遺伝子のうち、癌に関連する382種類のcDNA断片をアレイしたDNAチップを用い、標識プローブをハイブリダイズさせることにより各遺伝子の発現を解析した。発現量の大きい遺伝子は強い蛍光を発することにより検出可能である。正常組織をコントロールとして用い腫瘍細胞と比較することにより変化している遺伝子(mRNA)を見出すことが可能である。本研究の結果、頭頚部扁平上皮癌ではmatrix metalloproteinase-1, -3, -10, interleukin-8, interferon gamma-inducible protein 10の5つの遺伝子がupregulateしていることが明らかになった。またHyaluronic acid-binding protein 2, keratin 4, and keratin 13の3つの遺伝子がdown-regulateしていることが明らかになった。さらに382種類の遺伝子発現によりクラスター分類したところ頭頚部扁平上皮癌は大きく2つのクラスターに分類されることが明らかになった。今後、クラスター分類と臨床予後との関連性が注目される。
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