研究概要 |
1)聴力正常動物として成熟CBA/Jマウス、および加齢に伴って難聴を呈する動物としてDBA/2Jマウスを用いて、それぞれの電気生理学的解析を行った。いずれのマウスにおいても明確な内リンパ電位の低下は観察されず、DBA/2Jマウスにおいても一旦は正常なイオン輸送機構が成立することが判明した。加齢に伴う変化について引き続き解析中である 2)進行性感音難聴を呈するC57BL/6Jマウスの内耳を光学顕微鏡的に詳細に観察した。月齢が進むに伴いラセン靭帯の線維細胞の減少が認められ、線維細胞を介したカリウムイオン輸送機構(Kikuchi et al.,1995)の障害が示唆された。また、微細構造学的に感覚細胞の障害が認められ、このstrainにおいて明らかな進行性の内耳障害が惹起されていることが確認された。 3)免疫組織化学的手法を用いて、CBA/Jマウスにおいてgap junction蛋白の一つであるconnexin 26,Na, K-ATPase, Na-K-Cl cotransporter,電位依存性カリウムチャンネルKv3.1b, Kv3.4,水チャンネルのaquaporin-1, aquaporin-4、神経細胞のマーカーであるPGP9.5の発現がみられることを明らかにした。更にguinea pig, Mongolian gerbilについても同様の検討を行った。その結果、いくつかの蛋白においてはその発現様式に明確な種差が存在することが示され、各種動物における生理学的特性との関連が示唆された。
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