研究概要 |
現在のところ,オッセオインテグレーションをμmレベルで見ると,骨組織とインプラントが直接接触しているのではなく,その間にbiofluidが介在していることが分かっている.しかし,nmレベルの結合様式は全く解明されておらず,早期のオッセオインテグレーションを目指すためにはインプラント・骨界面における分子レベルの結合様式を明らかにしなければならない.そこで,チタンの表面性状が骨芽細胞の初期接着にどのような影響を与えるかについて,細胞接着関連分子などに焦点をあて分子生物学的に解明することを目的として,研究を計画した. 削りだしチタン(Ti),チタンプラズマコーティング(TPS),ブラスト処理の表面性状を持つチタンディスクを用意し,それぞれのディスクに株化骨芽細胞(HOS)を播種し,接着細胞数の測定および細胞伸展形態の観察(走査型電子顕微鏡:SEM)を行った.さらに細胞接着関連分子の局在をレーザー共焦点顕微鏡を用いて検討したところ,以下の結果を得た. 1.各試料における細胞接着率の比較においては,TPSにおいて最もよい結果が得られ(85%),Tiおよびブラスト処理では明らかに低い接着率(26〜28%)であった. 2.SEMによる細胞形態観察では,TiおよびTPS上で緊密に接着している細胞が観察された.一方,ブラスト処理に対しては試料と細胞との間に空隙が存在するルーズな接着形態を呈しているのが見られた. 3.さまざまな細胞接着関連分子をレーザー共焦点顕微鏡にて観察したところ,アクチンフィラメントを染色した場合,各試料間で明らかな違いが見られた.Tiにおいては細胞の長軸方向に沿って明瞭なアクチンフィラメントの走行が見られたのに対し,TPSおよびブラスト処理ではこのような走行は明瞭でなかった. 以上より,チタンの表面性状が骨芽細胞の初期接着に影響を与える可能性が示唆された.
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