研究概要 |
主としてCOX-2選択的阻害剤としてNS-398を用い、ヒト舌癌由来扁平上皮癌細胞株NA,HSC-4およびヒト白血病細胞株であるU-937,ML-1の細胞増殖抑制効果とその機序について検討し、以下のような結果を得た。 1 COX-2阻害剤であるNS-398は、扁平上皮癌細胞および白血病細胞株の増殖を抑制した。しかし、細胞増殖抑制の程度は細胞株によって異なり、増殖抑制効果はそれぞれの細胞株のCOX-2mRNA発現の強さと関連する傾向があった。 2 NS-398は、TPA,IFN-g,TNF-aによる白血病細胞株の分化も抑制した。 3 NS-398による扁平上皮癌細胞株の増殖抑制は、プロスタグランジンE_2の産生抑制およびサイクリン依存性キナーゼ阻害因子であるp21の誘導による細胞周期のG0/G1停止によって生じることが示唆された。 4 白血病細胞株では、NS-398によってプロスタグランジンE_2の産生は抑制されず、またp21の増強も認められなかった。 5 白血病細胞株にCOX-2アンチセンスを導入すると細胞増殖が部分的に抑制された。 6 扁平上皮癌細胞株を用いて、NS-398によってアポトーシスが誘導されるか否かを検討したところ、アポトーシスの初期変化は起きるものの細胞死には至らなかった。 以上の結果から、COX-2阻害剤は扁平上皮癌細胞および白血病細胞の増殖は抑制するが、細胞によってその機序が異なることが示唆された。いずれにしてもCOX-2阻害剤が癌治療に用いることのできる可能性があることが判明した。
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