研究概要 |
19歳から96歳の男女102名を対象として,ファーストフードを主とする食生活と健康状態(血液検査、主に脂質系)の調査を行った。対象者を青年群44名(平均年齢20.2±1.3歳),壮年群33名(平均年齢44.0±1.3歳),高齢群25名(平均年齢73.6±8.6歳)の3群に分け,比較検討した。対象者の血中成分は,青年群,壮年群,高齢群ともに平均値が健常範囲内であるが,青年群と壮年・高齢群間で有意差がみられた。高齢群の血清TGと血清Tchoが高く,次いで壮年群,青年群であり,高齢群と青年・壮年群間に有意差が認められた。血清HDLchoは青年群が高く,壮年群,高齢群の順であった。ファーストフードの利用回数は,青年群は週に平均4.0回と多いのに対し,壮年群は平均0.8回,高齢群は平均0.7回と少なく,青年群と壮年・高齢群間で有意差が認められた。ファーストフード店で購入する主な食品は,「おにぎり」が青年群(約60%),壮年群(約40%)で高い割合であったのに対し,高齢群では「寿司」が40%と多く,「おにぎり」は6位(12%)であった。逆に「寿司」は壮年群において6位(15%),青年群では10%未満であった。ファーストフードを利用する理由は,いずれの年代においても回答が多かった項目は「住環境」と「簡便性」であった。「嗜好」と「経済性」も青年群,壮年群において回答が多い項目であった。理由の中には、「栄養価」や「習慣性」の項目もみられた。壮年群は、ファーストフード利用頻度と摂取コレステロール量に正の相関(r=O.393, P<0.05),高齢群はファーストフード利用頻度と血清HDLchoに負の相関(r=0.472, P<0.05)が認められた。この結果は,若年者はファーストフード利用頻度が高いものの、血清コレステロールへの影響が少なく、高齢になるほど血中脂質への影響を受けやすいことを示していた。一方では、青年期からバランスの良い食事摂取をしておくことが、高齢になってからの生活習慣病の予防につながることを示している。
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