研究概要 |
本研究ではゲーム情報学的な解析によってチェス種(特に将棋種)を相互比較した.顕著な貢献を以下に整理する.(1)原将棋として知られる平安小将棋では,「王金対王」終盤戦のコンピュータ解析によって,盤サイズの進化論的変遷を合理的に説明できた.将棋種の変遷を考察する上で,歴史的文献資料による調査を補佐する重要な役割を担い得る可能性を示した.(2)ゲーム情報学的にゲームを比較するための指標を考案した.探索空間複雑性(search-space complexity)と決定複雑性(decision complexity)の二つの指標に基づいて、ゲームを比較する.前者は,ミニマックス木の最小サイズに相当し,そのゲームの平均終了手数Dと平均合法手数Bに対してB^Dで近似される.後者はD/(√<B>)という指標である.つまり,平均合法手数と平均終了手数のバランスのとれたゲームほどより洗練されている.(3)チェス種は,進化の大きな流れとして,ルールがより洗練される方向へと向かっている.チェス,将棋,象棋でそれが異なる手法で実現されてきたが,それは,歴史的な文化背景と密接な関係がある.
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