研究概要 |
始めに:レーザー核融合の標準的な燃料容器であるポリスチレンの薄膜の表面に正弦波状のリップルを形成することを動機として,フーリエ光学を応用したレーザー微細加工を考案した.これはグリッド状のマスクをレーザーで照射し,そのフーリエ変換像で任意のモードを選択し,逆フーリエ面で正弦波状の強度分布をもったパターンを得,そこに試料を置き加工するものである.この方法は原理はほぼ自明のようにおもわれるが,これまでに例がない新しいものである.研究の具体的内容は,(1)モード選択の理論的解析,(2)正弦波の単一モード性,(3)加工による表面精度の劣化,(4)微細加工の限界の4点について調べた. 実験条件:加工用のレーザーとして波長0.19ミクロンのArFエキシマレーザーを用いた.エキシマレーザーはポリスチレンのような高分子を微細加工する場合には,溶融跡などの熱損傷がない事が知られているからである.用いたグリッドマスクの線数はリップルの波長3から30ミクロンに応じで1000,500,200本/インチ,試料上でのエキシマレーザーフルーエンスは約1mJ/cm2/pulseである. 実験結果: (1)モード選択の理論的解析.フーリエ面においては0次光と対になった高次高調波があらわれる.単一モードを選択する場合には,0次光と高次光の片方のみを選択すると単一の強度分布が得られることを明らかにした. (2)作成された正弦波リップルを位相差型干渉顕微鏡で検査し,選択したモードに対して不要高調波は5%程度であり,実用的に十分な単一性が得られた. (3)加工前後の表面精度はいずれも50Å程度のレベルで加工による表面精度の劣化は認められなかった. (4)この方法で作成可能な最小波長は光学系の回折できまる.本研究で使用した光学系の回折限界と作成することのできる波長はほぼ一致し3ミクロンであった. 以上によりフーリエ光学を利用したレーザー微細加工の原理,実用性,その限界を明らかにした.
|