研究概要 |
1.金属ポルフィリン標品の調製:重質原油1種を出発物質として,これに含まれる金属ポルフィリン,特にバナジウムポルフィリンを選択的に分離・濃縮する方法について検討した.アルカンへの可溶性成分を抽出したのち,シリカゲル,アルミナ,オクタデシル化シリカゲル等を吸着剤に用いた連続的な予備ののち,分取用HPLCを適用することにより,原油中のバナジウムポルフィリン22化合物を単離した.この化学構造の推定を行った後,標品として本研究に適用した. 2.水中のポルフィリンの高倍率濃縮法:抽出溶媒をヘキサンとする高速向流クロマトグラフィーを濃縮法に用い,海水試料7Lを処理して,海水中の有機物を約6600倍に濃縮した.この濃縮物をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および逆相HPLCにより分析した結果,ポルフィリンを検出した海水中のポルフィリン分析に不可欠な高倍率予備濃縮法として高速向流クロマトグラフィーが有力な候補となりうることか実証できた. 3.1997年1月日本海で発生した重油流出事故(ナホトカ号事件)で流出した重油について,2ヶ月後に採取された漂着油とタンカー積載油について,ポルフィリン分析を行い,結果を比較した.有機化合物成分については,両者は異なっており,日光,大気,海水など環境条件下に暴露されている間ての重油の変質が明白であったが,両重油試料中のバナジウムポルフィリンについては,その分布パターンが類似度98%で一致した.この結果から,環境中に放出された重油由来の金属ポルフィリンは,暴露環境下でも安定であると確かめられた.同時に,ポルフィリン分析が海洋油濁を引きおこした油を特定するための有力候補となりうることが明らかになった. 4.石油由来のハナシウムポルフィリンのオクタノール/水間分配定数(log P):測定を試みたが,値が非常に大きいため,HPLCを用いる方法を利用すべきであるとの結論に達した.
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