研究概要 |
哺乳動物において、LPSがB細胞に引き起こす自然免疫反応は、広い生物種にわたって進化の過程で保持されてきた免疫反応であると考えられている。そのため、この免疫反応系にダイオキシンが及ぼす毒性効果は、人類のみならず野性生物にとっても重要な問題と思われる。我々は、LPSによって自然免疫反応を起こすマウス・プレB細胞CH12.LX細胞株を用いて、サイトカインの産生、及び免疫グロブリン遺伝子の組み替えに関与している遺伝子の転写発現に、ダイオキシンによって活性化されたAhレセプターが、NF-κBを介してどのように影響を受けているかを、分子生物学的手法を用いて明かにすることを試みている。 マウス・プレB細胞CH12.LX細胞を2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)処理することにより増加、あるいは減少する遺伝子を検索するために、コントロールの細胞とTCDD処理細胞のmRNAを調製し、Differential Display法により変化している遺伝子を単離同定した。32遺伝子のうち16がリボソーム遺伝子であり、8が未知の遺伝子であり、11が既知の遺伝子であった。既知の遺伝子は、RAMP-2,MHC class1,P198-7 antigen,BMP-4など免疫機能に関与する遺伝子が含まれていた。AhレセプターとNF-kBが相互作用することによって発現が変化する遺伝子を同定し、その機構を免疫沈降法、EMSA法、レポーター遺伝子アッセイ法によって明らかにするため、kBサイトを発現調節領域に持つ遺伝子を検討している。
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