研究概要 |
平成13年度は、大腸菌ニトロ還元酵素NfsAの反応特異性について解析した。本酵素はNADPHとニトロ化合物に対して高い反応性を持つが、NADHとフラビン化合物と殆ど反応しない。この性質に注目して平成12年度に分離したF42L置換体のNADHとFMNの反応性を増木する勢果が、Leu特異的なものなのか否かを調べるため、Phe42をLeu以外のアミノ酸に置換した変異体を作製した。F42Y, F42W及びF42V置換体は野生型酵素と同様に、NADHとFMNに対する反応性を示さないのに対して、F42T, F42H及びF42KはF42Lの反応特異性に類似しNADHとFMNの反応性を増大する傾向を示した。一方、F42Eは第一基質であるNADPHの特異性を変じないが、第二基質であるFMNとニトロフラゾンに対する反応性を逆転していた。この野生型と対称的な第二基質の反応性は、F42Eの三トロフラゾンに対する反応性が激減したことに起因する。このように、F42の置換は第一基質、第二基質の両方に対する反応性を変じることが見い出された。次に、F42Lの反応特異性を変じる二重変異体を分離した。FMN反応性を増大する変異体(F42L/T108A, F42L/E223G, F42L/R225L, T108A/K222R)とNADH反応牲を減じる変異体(F42L/N134S)が得られ、二重変異を分離したところ、N134SとR225Lは単独でNADH反応性を減じる変異体、FMN反応性を増す変異体として機能することが分った。これらの置換体の変異は全て活性ポケットを形成する残基かその近傍に位置し、その内のT108, N134, R225の変異は他のアミノ酸残基との水素結合を切断すると推測された。これらの事実を加味すると、NfsAの基質特異性は幾つかの特定なアミノ酸(F42, T108, N134, R225など)で規定されていると考えられる。
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