研究概要 |
土壌の中のダイオキシン類を捕集し太陽光により分解する方法の開発のための基礎的な実験を行った。ダイオキシンを固体表面の有機相に吸着させ太陽光による分解を試みた結果、無機固体表面と比較して分解速度の増加と、有毒ダイオキシンの発生の抑制に有効であることを見出した。1,2,3,4-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)をシリカ表面に吸着させて冬季の太陽光による分解を行うと、10-40時間で1,2,3-トリクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TrCDD)と1,2,4-TrCDDが0.3-2%生成した。一方、オクタデシルシリル(ODS)化されたシリカ表面に1,2,3,4-TCDDを吸着させて太陽光による分解を行うと分解率は4-8%であり、約5倍の加速効果が見られた。1,2,3-と1,2,4-TrCDDの生成比率は、シリカ上で17:83,ODSシリカ上で1:99であった。1,2,3,4,7,8-HxCDDの分解においても、1,2,4,7,8-PeCDDに対する1,2,3,7,8-PeCDDの生成比率がODSシリカ上で高いことを見出している。この結果は、1,2,3,4,5,6,7,8-OCDDのように毒性のないダイオキシンが、ODSシリカ上では容易に光分解して2,3,7,8-位から塩素を失い無毒化されるのに対して、無機表面においては遅く、しかも1,4,6,9-位から塩素を失って高い毒性等価係数をもつダイオキシンを生成し、毒性を増加させること、すなわち汚染土壌を放置することにより毒性(TEQ)の増加を招くおそれがあることを示す。また、疎水性の有機化合物が無機シリカ表面からODSシリカ表面に空気層を通って移動することを見出しており、土壌中のダイオキシンを有機物質上に分配・移動させ、太陽光による分解を行う処理法の可能性を見出した。ゴミ処理にともなって継続的に発生が続くこと、および、土壌の無機表面での光分解によって毒性が増加する可能性があることは、ダイオキシン類の有機物上への捕集法とエネルギー消費の少ない太陽光による分解法の開発の必要性を示唆するものと考えられる。
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