研究概要 |
Jurkat細胞の培養に用いられる無血清培地には,Seが亜セレン酸ナトリウムの形で添加されており,Seの添加は細胞,特に免疫系や神経系の細胞の生存維持に必須である.一方,血清添加培養ではSeの添加が不要なことから,血清中にはSeを運搬して細胞にSeを供給する因子が存在すると予想された.これまでの研究から,ヒト血清には2種のSe含有蛋白質が存在することが分かっていたので,このうちいずれがSe運搬作用を有するか欠乏血清を用いて同定した.これらの欠乏血清存在下にJurkat細胞を培養し,いずれの欠乏血清で細胞がSe欠乏になるかを調べた.細胞のSe含量や細胞内のSe含有酵素の活性を測定したところ,Selenoprotein P(SeP)欠乏血清を用いて培養した細胞の場合のみSe含量,cGPx活性,チオレドキシン還元酵素活性の低下が認められたSe欠乏細胞をSePを再添加したSeP欠乏培地で培養し,cGPx活性を測定したところ,添加したSePの濃度に依存したcGPx活性の回復が認められた.以上の研究から,SePがSe運搬蛋白質であることが明らかになった. Se運搬蛋白質を同定できたので,次に細胞への結合様式,取り込み機構について研究を行った.Se75を添加した培地で肝細胞腫Hep-G2を培養し,放射標識SePを培養上清から回収した.抗体を不溶化したカラムを用いて,放射標識SePを調製した.Jurkat細胞に可変量の放射標識SePを加え,細胞への結合量を測定し,スキャッチャードプロットから,受容体数,解離定数を求めた.Jurkat細胞上の受容体数は2,200,解離定数は0.67nMであった.また,放射標識SePと細胞を反応後,架橋試薬を加え,SDS-PAGEで解析したところ,分子量100KのSeP結合分子の存在が明らかになった.
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