研究概要 |
神経インパルス,神経伝達物質,活性ペプチド,ホルモン,オータコイド,細胞増殖因子などは,神経細胞においてシナプス膜に存在する受容体を刺激し,細胞内に細胞外からの情報を伝達している。その反応は,受容体に構成されたイオンチャネル,電位依存性イオンチャネル,代謝性受容体刺激によるいわゆるセカンドメッセンジャーの産生,チロシンキナーゼ活性化反応など多岐にわたっている。細胞内低濃度のカルシウムイオン(Ca^<2+>)は,セカンドメッセンジャーの一つとして,細胞内で重要な役割を演じている。本研究では,とくに,受容体刺激に基づくCa^<2+>の細胞内反応に焦点を絞り,脳内での作用を機能的な面から明らかにすることを目的とした。したがって,よりin vivoに近い反応を調べるために,ラット海馬初代培養細胞を用い,海馬での興奮性神経伝達物質として重要な役割を演じているグルタミン酸刺激に基づく反応を調べた。 生後1日目のラット海馬を摘出し,初代培養細胞を当教室の定法にて培養し,実験に用いた。10μMグルタミン酸を投与し,時間的経過で,CaMキナーゼII,IV活性化反応を比較,検討した。グルタミン酸投与後,CaMキナーゼII自己燐酸化反応は急激に上昇し,刺激後30分で上昇は維持されていた。一方,CaMキナーゼIV燐酸化反応もまた急激な上昇を示し,3分でピークを示した後,10分では元のレベルに戻った。活性化反応と考えられた。シクロスポリンAの投与によってグルタミン酸刺激CaMキナーゼIV燐酸化反応は上昇し,CaMキナーゼII自己燐酸化反応は上昇しなかった。この結果は,燐酸化CaMキナーゼIVはカルシニューリンによって脱燐酸化され,自己燐酸化CaMキナーゼIIは脱燐酸化されないことを示し,事実,in vitro実験で確認した。CaMキナーゼII,IVの細胞内動態を解析することができた。
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