研究概要 |
本研究は、軸索再生促進性アストロサイトと抑制性アストロサイトを分離培養して、この両者に共通して発現する分子や一方だけに特異的に発現する分子を明らかにする事を目的として開始された。その基本にある考え方は、Meinersら(J Neurosci 15;8096-8108,1995)が報告しているように、軸索再生促進性アストロサイトは形態的にフラットで細胞体の大きい細胞(flat astrocyte)であり、軸索再生抑制性アストロサイトは突起を長くのぱし細胞体の小さい細胞(rocky astrocyte)であり、容易に形態観察で両者の識別が可能で分離培養に誘導できるということであった。この両者は確かに形態的には大きな違いがあり、容易に識別できたが、それぞれを分離しても例えばrocky cells由来の皿からもflat cellが出現するという具合で、結果的に分離培養は不可能であるという結論に達した。 次に、Nobleらの方法に準じてRan-2,A2B5,O4のモノクローナル抗体を用いたimmunopanning法でtype 1 astrocyte、O-2A progenitor、type 2 astrocyteの分離培養を試みた。これらの細胞を、成熟ラット脊髄切断モデルに投与して、軸索再生促進的に作用する細胞群を検討したが、これまでのところtype 2 astrocyte-progenitor cellの投与がもっとも軸索再生に対して有効な細胞群であろうと考えている。このtype 2 astrocyte-progenitor cellのin vivoにおける軸索再生促進作用のメカニズムについては不明の点も多いが、contact repultantとしてcontact guidanceしている可能性が最も高いと考えている。
|