研究概要 |
赤外線画像は,臨床では現在まで熱画像としての遠赤外線画像のみが利用されてきた.医学では遠赤外線画像のみしか使われていないのは,生体体表から放射される電磁波の波長が10ミクロンの近辺にあったからで,受動的な探査法ではそれ以外の利用法が考えられなかったからにすぎない.本研究では赤外領域をもう一度帯域に分けて分光画像を作り分析してみる価値を検討することにある.赤外線検知器のうち近赤外線の領域は一般のシリコンのCCD素子を利用する.一般のCCD素子は可視光線の550nm(緑)付近から880nmの近赤外線の領域までほぼ平坦な検知特性を示し,感度を上げれば400nmから1000nmまでの可視光線全域と近赤外線画像を検知可能である.最初は民生用のCCDカメラの760nm以上の波長の赤外線カットフィルターを外し,820nm以下の可視光線をカットオフする一般赤外線写真用のフィルターを取り付け,白色光のフラッドランプと830nmの自家製レーザーダイオードを光源として使用した.ついで,特定の波長帯域の画像を得るために,検知器の感度を向上させる必要から冷却型のCCD素子を利用した(検知素子は157万画素のKAF-1600:Kodakを使用).光源には赤外領域まで比較的広範な波長を持つハロゲンライトを用い,カットオフフィルターには730,766,800,830,880,1064nmを用意した.遠赤外線画像及び可視光線画像を同時に撮影するために,既に開発がされている赤外線画像重畳法を用いた.実験対象は健常人の手指と足先部とした. 820nm以下の帯域をカットオフした赤外線画像では反射光線で皮下の静脈像が描出される.透過光画像では,光線の射出側で皮下3mm程度までの静脈像が明瞭に描出される.この状態で帯域フィルターをかけてcooled CCDで画像計測を行うと,830nmの波長帯で血管像を描出することができた.各帯域の画像の意味は現在精査中である.
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