研究概要 |
本研究において我々は,(1)着色微小球(直径1μm,青色)あるいは(2)hydroxyapatiteを細胞膜表面に付着させ,パルス波レーザ光誘起応力波(Laser induced stress wave : LISW)の効果を細胞膜上に限局するモデルを提案し,細胞のtransient permeabilityおよび遺伝子導入効率を評価することで,本モデルの有効性を検証した.実験はマウスリンパ腫由来の細胞を対象として行われ,Nd : YAGレーザ(Spectra Physics GCR-150,パルス半値全幅7-9ns,繰返し周波数10Hz)の第二高調波532nmを用いた.Permeabilizationの評価は,照射後の細胞をPropidium IodideおよびFluorescein diacetateにて染色し,Flow cytometerにより生・死細胞および膜透過性を示す細胞を検出した.導入plasmid DNAにはpEGFP-Fを用い,同様にFlow cytometerにより遺伝子発現細胞を定量した.レーザ光照射直後において,膜透過性を示す細胞の割合は照射パワー密度,照射時間および微小球添加量に依存して変化し,膜透過性はレーザ光照射後50分間持続した.61%の細胞が膜透過性を示したとき,死細胞は13%であった.一方,plasmid DNAの導入試験では,レーザ光照射群においてGFPの発現が認められ,その蛍光強度は非レーザ照射群の20倍に達した.細胞表面または近傍の微小球あるいはhydroxyapatiteから発生するLISWが細胞膜の透過性を高めたものと考える.本手法はレーザ光のパワー密度により細胞のPermeabilizationの程度を制御することが可能であり,遺伝子を含むmacromoleculeの細胞内導入に利用できるものと考えられる.
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