研究概要 |
平成25年度においては, 医療費の国際データを用いたデータ包絡分析(DEA : Data Envelopment Analysis)を用いた研究を行った. ここでは特に政府の医療支出における効率性分析を行った. 多くの国に於いて公的医療歳出は政府歳出において大きな割合を占めており, しかも, 最近は高齢化の影響より増加しつつある, 本研究では①どの国が効率的な医療歳出を行っているか, そして②その効率性に影響を与える要因にはどのようなものがあるかを研究対象とした. 医療歳出の効率性にしたがって各国に順位をつける研究は他にも存在するが, その効率性に影響を与える要因を探り出そうという研究はそれほど多くない. 本研究では特に各国の統治制度の質(ガバナンス)が当該効率性に与える影響に注目した. 具体的には, 1996年から2010年まで150ヶ国の国際データを利用して, DEAを用いて各国の公的医療歳出の効率性を計測し, そこで計測されて効率性指標に効率性に影響を与えると考えられる要因を回帰させた(第2段階推定). 特にカバナンス指数として, 説明責任, 政治的安定, 政府の能力, 規制監督の質, 腐敗の抑制という世界銀行が作成したデータを用いた. その結果, 説明責任と腐敗の抑制が医療費における効率性の達成に資することが示された. この研究の暫定結果は, 平成24年度の第70回日本財政学会(平成24年10月5日~6日 : 慶應義塾大学, 東京)で報告したが, その後も, DEA推定におけるブートストラップの活用, さらに進んで, 2段階推定における複数の推定法の比較など, 推定方法緻密化を行っており, 研究期間が過ぎた現在でも引き続き検討を続けている.
|