研究課題/領域番号 |
12F02028
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 外国 |
研究分野 |
医用生体工学・生体材料学
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
高玉 博朗 中部大学, 生命健康科学部, 准教授
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研究分担者 |
KHANNA Rohit 中部大学, 生命健康科学部, 外国人特別研究員
KHANNA Rohit 中部大学, 生命健康科学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2013年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2012年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 人工関節 / チタン / コールドスプレー / マイクロアーク酸化 / アルミニウム / アルミナ / 酸化 / 表面処理 |
研究概要 |
本研究では、骨結合能を付与可能なチタン合金上に、耐摩耗性に優れるAl_2O_3を形成させることにより、優れた骨結合性、耐摩耗性、破壊靭性を併せ示す新規の人工関節用部材の作製指針を明らかにすることを目的とする。しかし、既存の種々の方法では緻密で厚く、高い密着性を示すAl_2O_3を直接チタン合金上に形成することは困難なので、本研究では、まずコールドスプレー(以下、CSと略記)法によりAl金属層を形成後、それを選択的に酸化することによりAl_2O_3層を形成する方法を模索した。昨年度に、CS法によるAl金属の積層条件を明らかにしたので、今年度は、密着性向上のための中間層の形成と、選択的酸化が可能なマイクロアーク酸化(以下、MAOと略記)処理と、得られた試料の密着性や硬度などの力学的評価を行った。 CS法でAlを積層した試料は、積層条件を選んでも、下地基板と熱膨張係数などの特性の違いから、切削過程で一部の界面に亀裂を生じやすかった。そこで、Alの融点以下の温度で試料を加熱することにより、その界面に緻密なTiとAlの反応層を傾斜的に形成し、切削しても亀裂を生じないように密着性を向上させることに成功した。ボールテストおよびビッカース試験により、反応層を約μm程度に薄くすると、圧こん周囲に亀裂を生じなかった。これは、ある程度の変形を許容できることを示唆している。続いて、Alを積層した試料をMAO処理することにより、強度低下を引き起こすTi-Al-O系の酸化物や酸化チタンの形成を抑制しながら、積層したAlのみを選択的に酸化し、その表面にAI203を形成することに成功した。最表面には多孔性のγ-Al_2O_3が形成されたが、その下部には緻密で十分な厚みを有するほぼ単相のα-Al_2O_3が形成された。厚さは処理時間により制御可能であった。得られたAl_2O_3層の硬度は1585-1730Hvであった。この値はAl_2O_3の物性値に近ため、耐摩耗性を示すと考えられる。 以上のことから、本研究で提案した手法により、チタン合金表面にα-Al_2O_3層を形成させることができた。従って、本手法が、優れた骨結合性、耐摩耗性、破壊靭性を併せ示す新規の人工関節用部材を作製するための新たな手法として有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに成果を挙げており, おおむね順調に進展している。当初計画に掲げていた加熱処理法によりも、選択的にAl金属のみを酸化できるマイクロアーク酸化法を取り入れることにより、強度低下を引き起こすTi-Al-O系の酸化物や酸化チタンの形成を抑制でき、より緻密で厚くほぼ単相のα-Al_2O_3層をチタン合金表面に形成させた人工関節用部材が得られた。本研究に興味を示す企業も参画し、共同で特許を出願することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果により、緻密で厚くほぼ単相のα-Al_2O_3層をチタン合金表面に形成させる基礎的知見は得られたので、今後は、人工関節に適したA1_2O_3層や反応層の厚さ、緻密性、結晶性などの制御、密着性向上のための傾斜構造などの制御、硬度や密着性や機械的強度の評価及び向上などを達成するために、さらなるマイクロアーク酸化法などの最適化を行う。また、得られた部材の耐摩耗性の評価も行う。さらに、実際に治療に使用されている人工関節部材のような球状または複雑形状の表面への本技術の適応を検討していく。そのために、新たな研究費を獲得して、他研究機関や企業と連携してさらに研究を発展させたい。
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