研究課題
特別研究員奨励費
近年、光ファイバーを用いた様々な中性子検出器の開発が進められてきた。光ファイバーは離れた場所から測定することができる、細径のため狭い空間に挿入することができ空間分解能が高いなどの特徴を持っており、金属被覆を用いた光ファイバーであれば600℃以上という過酷な高温環境であっても使用することができる。しかし、これまで広く用いられてきた中性子との反応により生成された荷電粒子を光に変換するシンチレータは高温では使用できないという問題点がある。そこで本研究の目的は、高温環境で使用できるような細径の中性子検出器として、チェレンコフ光を測定することにより熱中性子を測定することができる新しい光ファイバー検出器を開発することである。様々な核種を検討した結果、中性子のコンバータとしては反応断面積が大きいガドリニウム(融点約1300℃)の箔を用い、チェレンコフ光を発光させる媒質としてはルチル(TiO_2)結晶(融点約1800℃)を用いた検出器プローブを作成した。ガドリニウム箔に中性子が吸収されることにより転換電子またはγ線が放出され、それによりルチル結晶中で発生したチェレンコフ光を光ファイバーで伝送し、光電子増倍管により電気信号に変換することができる。この検出器を用いて京都大学原子炉実験所の研究用原子炉(KUR)の熱中性子導管において様々な条件下で熱中性子の測定を行った。実験とモンテカルロ計算コードMCNPXによる解析の結果により、この検出器プローブに入射する熱中性子束とガドリニウムから発生するγ線により生成されるルチル結晶中での電子強度との間に比例関係があることを確認することができた。従って、チェレンコフ光を用いる本手法は中性子を測定する手法として有効であり、今後、高温や高線量下のような過酷な環境においても利用できる新しい細径の光ファイバー中性子検出器を開発することができることが判った。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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