研究概要 |
イネの高温大勢に強くかかわる葯基部の裂開の長さの決定に関与する遺伝子座の位置および裂開の大きさが決定される仕組みを明らかにすることを目的として, 日本晴/カサラースの戻し交雑自殖系統群(BILs)および日本晴/カサラース染色体断片置換系統(CSSLs)を対象に, グロスチャンバー内に設定した高温条件下での葯の裂開特性と稔実に関するQTL解析を行った. BILsを用いた解析から, 葯基部の裂開にかかわる遺伝子座が第2染色体上に検出され, その寄与率は12%であった. また, その効果はCSSLsによって確認された. この遺伝子座における対立遺伝子の相加効果は, BILsで40.0μmであり, CSSLsで132.7μmであった. 圃場におけるこれまでの研究報告に照らして, 高温条件下における稔実を6.2~20.5%向上させる可能性のあることが示された. 同様に, BILsを用いた解析から, 葯の頂部の裂開に関与するQTLが第5および第12染色体上に検出され, そのうち, 第5染色体上のQTLの効果がCSSLsによって確認された. 葯基部の裂開の長さに関与するQTLは, 高温条件下での稔実率を対象としたQTL解析では検出されなかった. また, BILs内では, 高温条件下における葯基部の裂開長と稔実率との間に有意な相関関係が認められた. これにより, 稔実率だけでなく, 個別の高温耐性形質に関するQTL解析やそれに基づく育種は, 高温耐性の向上に有効であることが示された.
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