研究課題
特別研究員奨励費
磁場の弱い中性子星(NS)にガスが降着する系、すなわちLow Mass X-ray Binary (LMXB) では、降着するガス流はまず光学的に厚い降着円盤を形成するが、中心に近づくと光学的に薄い「コロナ」に変化し、最後はNS表面に激突する。解放される重力エネルギーは、円盤からの多温度黒体放射(軟X線)、NS表面からの黒体放射、それらの光子がコロナでコンプトン散乱された硬X線、という3つの成分で放射される。このうちコロナの位置や形状は、長年の研究にもかかわらず、不明であった。Zhang博士の研究手法は、LMXBのうちほぼ真横から見ていると考えられる一群の天体(dipperと呼ばれる)ではそうでない天体よりコンプトン散乱が系統的に強いかを検証することである。もしそうであれば、コロナは球形ではなく、扁平であると結論できる。Zhang博士は昨年度、宇宙X線衛星「すざく」により観測された、ソフト状態にあるdipper 4U 1916-053のデータを解析した結果、dipperではないLMXBに比べ、確かにコンプトン散乱の効果がより強いことを確認した。それを受けて今年度は、ハード状態のdipperとして EXO 0748-676を選び、その「すざく」データを同様に解析した。その結果、ここでも通常のハード状態LMXBに比べて逆コンプトン散乱が強い (具体的にはコンプトンの光学的厚みがより大)ことが確認でき、ハード状態での良く発達した高温コロナが、やはり完全な球形ではなく、一定の扁平度をもつことを確認できた。以上により、降着率の高いとき実現するソフト状態でも、低いとき現れるハード状態でも、高温コロナの形状は球形ではなく、降着面に沿って扁平であることが確認できた。これにより研究の目的が達成されたといえる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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