研究概要 |
1. 均質な吸収媒質における非均一波の発生と負の屈折 媒質界面における光の反射や透過を論じているほとんどの研究では, 波数ベクトルは実部が屈折率, 虚部が吸収を表すような複素屈折率を成分に持つベクトルとして記述されており, 波数ベクトルの実部と虚部は空間的に平行である。これに対して, マクスウェル方程式はより一般的な解を許す。すなわち, 波数ベクトルの実部と虚部は非平行であってもよく, このような波を非均一波(inhomogeneous wave)と呼ぶ。非均一波の空間伝搬特性を明らかにするため, 我々はマクスウェル方程式とベクトル解析に基づいた解析を進め, 一般的なスネルの法則を導き出した。一般的なスネルの法則によると, 入射波と反射波は進行方向が界面に対して対称なだけで, 波の性質自体は全く同一であることが簡単にわかる。透過波については話はもっと複雑であるが, より詳細な解析の結果, 透過波の屈折率および減衰係数は, 媒質パラメータに依存するだけでなく, 位相ベクトルと減衰ベクトルの界面への入射角などにも依存するということがわかった。 2. メタマテリアルにおける入射光の無指向的平行化 1.に要約した吸収媒質間の界面における非均一波の発生と伝搬の研究によって, 媒質界面で入射光がどのように反射および透過するかが理解できたので, 次の段階として, 今度はどのような媒質条件であれば所望の透過角度が得られるかについて考えた。ここでは特に, いかなる入射角に対しても透過角が0°であるような媒質が設計できるかどうか, また, もし設計できるのであれば, その媒質はどのような条件を満たさなければならないかについて考えた。基本的なアイディアはFengらによって2012年に提案されており, 彼らはp偏光した光が誘電率であるメタマテリアルに任意の角度で入射すると, 入射波のエネルギー流は必ず界面に垂直な方向に向かう, ということを示した。
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