研究実績の概要 |
2000年にいわゆるメタゲノムの手法を用いて、海洋細菌がプロテオロドプシンを持つことが報告された。その後の研究を通じ、海洋表層の細菌群集の約半数がこれを保持する可能性が指摘されている。プロテオロドプシンは光駆動型のプロトンポンプで、光エネルギーを使って膜内外にプロトンの勾配を作り出し、内向きのプロトン駆動力を生み出す。このプロトン駆動力に応じてプロトンが細胞内に流入する際、ATPが合成されるため、外洋の低栄養環境下での細菌群集の生態およびエネルギーフラックスるの視点から重要である。本研究時には、プロテオロドプシンを保持する海洋細菌株の数が少なく、世界では10株程度であった。当研究室ではプロテオロドプシンを保持する細菌を広範囲に集め、その系統解析、全ゲノム解析および生理的な解析を行うことを通じて、どのような微生物がPR遺伝子を持っているのか、その遺伝子構造の特徴および遺伝子伝達経路を明らかにしていくことを通じて、PR遺伝子の進化の全体像を描き出すことを目的とした。東北海域、茨城県大洗、神奈川県三崎などから、多数の分離株を得、そこから16S rDNA塩基配列情報、プロテオロドプシン遺伝子の保持をPCRで検出することにより、Leptobacterium, Algibacter, Lutimonas, Croceitalea, Polaribacter属のプロテオロドプシン保持株を得た。これらの分離株のプロテオロドプシン遺伝子系統解析、全ゲノム解析を行い、プロテオロドプシン遺伝子の進化プロセスについての予備的解析を終えた。
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