研究実績の概要 |
昨年度より継続し、A+2M2+O2 およびA+3M2+O2.5 (A: Li, Na, K; M: Mn, Fe, Co)およびポリアニオン系化合物の検討を進めた。オキシフッ化リン酸塩については、高圧を印加することで従来知られていなかった高圧相のNa2CoPO4Fを創生し、その結晶構造と磁気特性について報告を行った。これは、昨年度進めた高容量型の正極材料として期待されるNa2MPO4F (Mn, Fe, Co, Ni)を含む一連のオキシフッ化リン酸塩の合成と結晶構造について研究を拡張した成果である。さらにその関連化合物であるCo2PO4Fについても、結晶構造を報告し受理された。これらのCo系遷移金属系化合物は、新規な遷移金属系材料群開発の端緒になると期待している。さらに昨年度国際誌で報告したLi9Mg3[PO4]4F3 とLi2MgPO4Fのイオン伝導機構について、リチウム電池国際会議で報告を行った。このように、種々の材料探索を積極的に進める中で、銅系のバナジン酸化合物が250 mAh/g以上という秀でた高容量特性を示すことを発見し、特許として出願した。現在投稿論文の作成を進めているところである。 当初の目的の一つであったナトリウムイオン電池用正極材料の開発には至らなかったが、関連するNa含有複合酸化物を創生し、この分野の発展に寄与できたと思われる。とくに、リチウムイオン電池用正極材料については新規な材料を論文、国際会議、特許として報告するなど大きな進展を示すことに成功した。新しいコンセプトであったA+2M2+O2 およびA+3M2+O2.5系材料で有効な正極材料は見出すことができなかったが、種々の磁性を示す新規な化合物を創生した。そのいくつかについては、オーストラリアの研究機関ANSTOにおいて、中性子線回折による実験を実施しており、本報告書に加えて更なる論文投稿の準備作業を継続している。
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