研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、日本における倫理判断に関わる間主観的な理解の在り方を明らかにすることにある。日本の社会におけるいわゆる集団主義的特徴を、倫理学の議論のなかに指摘することができるのか、わけても応用倫理学の議論において、文化的背景によって説明される立場による相違を見いだすことができるのかが検討の対象となる。この目的のために、第一段階として、胚性幹細胞をめぐるドイツと日本における生命倫理学の関連文献をレビューすることを通じて、胎児の道徳的地位および「ヒトhuman being」と「人格person」の概念に関して、日独における異同を明らかにすることを試みた。第二段階として、この二つの概念をより広い文脈において検討した。その際に、日本の哲学界を代表する西田幾多郎と和辻哲郎の倫理学における関連概念に、わけても西田の「自我」と和辻の「人間」の概念に注目した。これらの概念に言語分析の方法によって検討を加えるとともに、社会・文化心理学の研究をも援用した。さらに、この考察の所産について、メタ倫理学の観点からも考察を加えた。日本とドイツ、それぞれにおける議論に共通することとして、人格概念を段階的に捉えようとするのを避けようとする志向を指摘することができる。ドイツにおける胎児を巡る議論では、キリスト教的文脈に、あるいはカント哲学に依拠して、その絶対的不可侵性が主張されている。日本の議論においても、カントにおける尊厳、目的と手段の概念への言及が見られるが、人間の生命の萌芽という表現もしばしば使われている。こうしたことから、ヒトと人格の関係については、両者を区別することは共通しているが、日本の議論ではその区別が和らげられていると見ることができた。
(抄録なし)
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O. Friedrich und M. Zichy (Hg.) : Persönlichkeit. Neurowissenschaftliche und neurophilosophische Fragestellungen. Munster : Mentis
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Bioethics
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