研究概要 |
インフルエンザウイルスのゲノムRNA (vRNA)は8本に分節化している。それぞれのvRNA分節は核蛋白質(NP)およびヘテロ3量体(PA、PBおよびPB2)のポリメラーゼと共に、vRNAの転写・複製を担うリボ核酸蛋白質複合体(RNP)を形成する。ポリメラーゼは、棒状のRNPの一端に局在することが生化学的解析および電子顕微鏡法により明らかにされている(Honda et al.,1987年 ; Murti et al., 1988 ; Arranz et al., 2012 ; Moeller et al., 2012)。感染細胞核内で形成された8種類のRNPは核外輸送されたのち、Rab11陽性リサイクリングエンドソーム依存的に細胞膜直下まで輸送され、出芽ウイルス粒子の先端から吊り下げられる様に8本1セットずつ規則的に取り込まれる(Eisfeld et al., 2011 ; Momose et al., 2011 ; Noda et al., 2006, 2012)。しかし、ウイルス粒子中に8種類のRNPがどのように配置しているか、またRNPがどのようにして細胞内で輸送されるかなど、RNPのウイルス粒子内への取込み機構には不明な点が多い。そこで本研究では、ウイルス感染細胞質内でRNPがどのような形態でRab11陽性エンドソーム依存的に輸送されるかを明らかにすることを目的とした。蛍光抗体法でウイルス感染細胞内のRNPとRab11を共染色し、さらに同視野を電子顕微鏡観察する手法である光一電子相関電子顕微鏡法を用いて、その微細形態を解析した。また、電子線トモグラフィー法を用いて、RNPの結合するリサイクリングエンドソームの三次元構造を解析した。その結果、RNPは棒状構造の一端でリサイクリングエンドソーム膜に結合し、無数のRNPが放射状にエンドソーム周囲に配置されるという新たなRNP輸送機構が明らかになった。また、ウイルス粒子へのRNP取込みに重要であるウイルス膜たんぱく質がリサイクリングエンドソームには局在せず、膜たんぱく質を欠損させてもRNPのエンドソームへの局在に変化がなかったことから、RNPは膜たんぱく質非依存的にエンドソーム膜に結合することが明らかになった。
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