研究課題
特別研究員奨励費
これまでの研究により、ラン藻の嫌気環境適応機構において、ChIRという転写制御因子が重要な働きを担っていることが示された。ChIRは環境中の酸素レベルに応じて、遺伝子の発現を活性化する転写活性化因子として機能している。しかし現在のところ、ChIRがどのように酸素環境を感知しているかは明らかとなっていない。昨年度までの研究により、ChIRタンパク質が鉄硫黄クラスターと呼ばれる金属クラスターを保持していることが示された。鉄硫黄クラスターは、酸素にさらされると崩壊するという性質を持っており、これまでに、鉄硫黄クラスターを介して酸素環境を感知している転写制御因子がいくつか報告されている。よって、ChIRも鉄硫黄クラスターを介して酸素レベルを感知している可能性がある。鉄硫黄クラスターには[2Fe-2S]や[4Fe-4S]などいくつかの種類が存在している。そこでその種類を同定するために、ICPによる金属定量を試みた。その結果、タンパク質中に鉄と硫黄が確かに含まれていることが明らかとなった。しかし、その化学量論としての解釈が困難であったため、サンプルの調製法など実験条件の改善が今後必要である。加えて、ChIRに依存しない嫌気環境適応機構の解明のため、ゲノム中にトランスポゾンをランダムに挿入した変異株ライブラリーから単離した嫌気環境下で生育不良を示す変異株の解析を行った。昨年度までに明らかとなった8カ所のトランスポゾン挿入部位について、対応する遺伝子の単独欠損株をいくつか単離した。ライブラリー解析の結果は、嫌気環境適応機構が代謝系全体に広く分布している可能性を示唆するものであった。
(抄録なし)
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The Journal of Biological Chemistry
巻: 287 号: 16 ページ: 13500-13507
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光合成研究
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