研究課題
特別研究員奨励費
高温変成岩中に含まれるジルコンの包有物、及びジルコンを含む母岩の形成条件を系統的に研究した例は乏しい。したがって本研究では、主に高温変成岩中のジルコン包有部に着目した。本年度は、東南極Lutzow-Holm岩体(LHC)から採取された高温変成岩に対象に、ジルコンに含まれる包有物から変成作用の履歴を推定することを目的とする。これまでに約350サンプルの薄片を作成して、鏡下でジルコンが包有物を含んでいる約65サンプルを選定した。65サンプルの内訳は、花崗岩質片麻岩5サンプル、超苦鉄質グラニュライトが2サンプル、残りが泥質片麻岩、砂質片麻岩であった。次に、X線マイクロアナライザーやラマン分光装置を用いて、包有物の同定を行った。包有物を同定した結果、ジルコンの包有物だけの情報から温度圧力条件を推定することは難しいことが判明した。一方ジルコンを含むサンプルから部分溶融を受けた痕跡を見出すことができた(結晶化したメルト包有物の発見)。このメルト包有物の組成を復元したうえで、メルト包有物が結晶化した温度圧力条件を推定した。その結果、約750-800 ℃、8 kbar程度の条件で固結したことが分かった。更に、相平衡図を用いてメルト包有物を含むサンプルが溶融した際の温度圧力条件を見積もった結果、約800℃、8kbar程度であると考えられる。さらにこの岩石は最大で7%ほど溶融したことが分かった。この条件はLHCの変成作用のピークよりも若干低温側であるため、累進変成作用時に部分溶融が起こったと考えられる。 高温変成作用に特有な部分溶融時の現象とジルコンの関係性について研究することが今後の課題である。例えば、ジルコン中の希土類元素濃度とジルコンと共生する鉱物の希土類元素の分配を以てジルコンがどの段階で形成されたかを推定する方法が考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Asian Earth Sciences
巻: 95 ページ: 51-64
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