研究課題/領域番号 |
12J00280
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
思想史
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
百木 漠 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2013年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2012年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | アーレント / マルクス / 労働 / 全体主義 / 活動 / 仕事 / 公共性 / 資本主義 |
研究概要 |
本研究は、ハンナ・アーレントの思想史研究、とりわけ『全体主義の起源』(1951)から『人間の条件』(1958)に至る間のアーレントの思想形成過程を、彼女の労働論およびマルクス論を手掛かりにして明らかにするものである。膨大な先行研究量にもかかわらず、彼女の二つの主著『全体主義の起源』と『人間の条件』を結ぶ論理についてはいまだ明確な説明が与えられていないといってよい。そこで本研究では、1950年代にアーレントが書き残した草稿集を研究対象として、その論理を明らかにすることを目的としている。これまでアーレントの思想は、主に政治思想史の分野で「活動」論や「公共性」論の観点から研究されてきたが、本研究では敢えて彼女が低く評価した「労働」論に着目することにより、アーレント思想の新たな一面を描き出すことを目指している。アーレントの労働論は、彼女の近代化論や大衆社会論、全体主義論と深い関わりを持つと同時に、『全体主義の起源』と『人間の条件』という彼女の主著を繋ぐミッシング・リンクの一つであり、また西欧社会における「労働思想の系譜学」を読み解くうえで重要な参照点となる見取り図を提示している、というのがこれまでに本研究が導き出した結論である。また、本研究はアーレントの個人思想研究にとどまるものではなく、最終的に西欧社会における「労働の系譜学」を描き出すことで、現代的労働を考察するための思想的枠組みを提示することを目標としている。雇用の流動化、非正規雇用の増加、ワーキングプァ問題など近年の日本社会において問題となっている労働諸問題を長期的・マクロ的な視野から考察するためにも、このような思想的・理論的枠組が必要とされていると言えよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アーレントの労働論およびマルクス概判を手がかりとして、『全体主義の超療』と『人間の条件』を結ぶ論理を明らかにするという当初の研究目標は、昨年『社会思想史研究』に掲載ざれた論文(査読つき)によって、概ね達成されたものと考えている。これに加えて、『唯物論研究年誌』に掲載された論文では、アーレントの労働運動論および評議会制度論について考察した。また『社会システム研究』に掲載された論文では、アーレントのマルクス誤読を手がかりとして、彼女の余暇論にっいて論じることを試みた。そのほか、昨年度は4つの国内学会で研究報告を行うなど、計画通りに研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、アーレンの労働思想に関する博士課程中の研究をでる。仮タイルは「労働と全体主義―ハンナ・アーレントの労働思想から」であり、博士号取得後は単著としての出版を目指す予定である。そのために、これまで執筆した論文をテーマに沿って再構成するとともに、新たにアーレントの「社会的なもの」概念について再考する論考と、「始まり」概念の二重性について考察する論考を書き下ろす予定である。この二つの論考は、博士論文に収録するとともに、将来的に学術雑誌『政治思想研究』、『社会思想史研究』などへ投稿したいと考えている。博士号取得後は、これまでのアーレント研究から導かれた「労働と全体主義」というテーマを、ハイデガー哲学やフーコーの生政治論などと結びつけつつ、より広範な全体主義研究および「労働の思想史」研究へと発展させていく予定である。
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