研究概要 |
パルス幅が光電場振動の数サイクルにまで狭められた超短パルスレーザーは, レーザー粒子加速や高次高調波発生等の多様な科学技術・学術及び産業分野に極めて有用であることから近年急速に進歩している. 特に, 光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCPA)は超広帯域性と大口径化が可能であり, 超高強度レーザーの分野でも今後大きく伸びる可能性を秘めている. しかし, OPCPAによる数サイクルレーザーの応用では, 安定性とビーム品質が重要である, 高安定・高ビーム品質のOPCPAを実現するには, 同じく高安定・高ビーム品質の励起レーザーの開発が必要不可欠である. また, さらなる応用分野の拡大のためには高繰り返し化が必要であり, 産業応用の観点からはコンパクト化も望まれている. 本研究では, OPCPAの励起源として市販の電気同期YAGレーザーではなく, 独自開発の光同期ファイバーレーザー増幅器を用いることによって, 高繰り返し数サイクルレーザー励起光源の開発を行ってきた。 しかしながら、構築した増幅器に用いた大口径フォトニック結晶ロッドファイバーは(PCロッドファイバー)、高出力化に伴い、励起による熱の影響が無視できないという問題があった。そこで本研究では、励起強度を熱の影響のない領域まで落とし、PCロッドファイバーを再生増幅器に用いることを考案した。 増幅器の設計は、独自の計算コードにより増幅シミュレーションを行い最適な構成を決定した。実証実験を行ったところ、入力エネルギー150nJ, パルス幅2.5ns, 繰返し周波数1kHzで励起パワー13Wの時、出力エネルギー257μJ, ゲイン1700倍を得た。これは、ファイバーを用いた再生増幅器では、世界最大出力である。また、再生増幅器としたことで熱の影響を抑えることができ、M^2で1.2(x)1,4(y)と非常に高品質なプロファイルを得ることができた。さらに、増幅器でPCロッドファイバーを用いた場合は、高出力を得るためには、抽出効率を高めるために、入力エネルギーを数10μJ程度必要としたが、PCロッドファイバー再生増幅器では、100μJ程度の入力で同程度の出力を達成できることから、必要とするコンポーネントの数を大幅に減らすことが可能となり、コンパクト化も可能となった。 以上より、本研究は、光パラメトリック増幅の励起光源として、高出力化、コンパクト化を実現するものであり、ファイバー装置のより一層の発展に貢献できるものである。
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