研究概要 |
本研究では、遷移金属触媒を用いた環化付加反応における立体選択的な反応開発を目的としている。前年度において、ニッケル/キラルN-ヘテロサイクリックカルベン配位子を触媒として用いたエナンチオ選択的な[2+2+2]環化付加反応の開発に成功しており、6員環炭素骨格の4不斉点制御を達成した。本年度は、ニッケルならびにコバルト触媒を用いたアルケンと1,3-エンインとの[2+2]環化付加反応および、その不斉反応を開発した。 4員環炭素骨格は歪みが大きく反応性が高いため合成中間体としても非常に魅力的な化合物である。また、4員環骨格そのものを有する天然物や生理活性物質も多数存在する。しかしながら、その大きな歪みのため不安定であり合成手法は限られていた。本年度は、上記の[2+2+2]環化付加反応で得られた知見を下にニッケル触媒を用いた電子不足アルケンと1,3-エンインとの[2+2]環化付加反応を開発した。また、錯体化学的手法によりη^3ブタジエニル構造が重要であることを見出だした。ニッケル触媒では電子求引性基を持たないアルケンを反応させることは困難であったが、コバルト触媒を用いることでスチレン誘導体も1,3-エンインとの[2+2]環化付加に適用可能となった。さらに、ニッケル触媒存在下キラルNHC配位子を用いることでシクロブテン誘導体が50%eeのエナンチオ選択性で得られた。コバルト触媒を用いる反応においては、リンー不斉二座配位子を用いることで62%eeのエナンチオ選択性が得られた。本手法により、単純かつ入手容易な原料から歪んだシクロブテン環が容易に合成できるようになるため、天然物や新規生理活性物質の合成手法の開発に繋がると考えられ、多大な波及効果を及ぼすと期待できる。
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