研究課題
特別研究員奨励費
細胞の致死回避に使われる染色体融合現象を解析するには、それを実験的に再現し、コントロールできるアッセイ系が必要である。そのために本研究では当研究室で独自に構築された分裂酵母のセントロメア破壊アッセイ系を用いた。分裂酵母のセントロメアを人為的に破壊すると、大多数の細胞が染色体分配異常を起こし死に至るが、一部の細胞はセントロメアを欠失した染色体と無傷な染色体とが融合することで生き残る。セントロメアを破壊してから死ぬあるいは染色体融合を起こすまでの間にどのようなことが起こっているのかを調べた。まずセントロメア破壊後の染色体の挙動を調べると、予想どおり多くの細胞で染色体分配異常が生じており、それに伴う遺伝子の発現量の変動も観察された。また、DNA二重鎖切断修復関連因子にGFPタグをつけ、その挙動についても観察したところ、ドットの数に明らかな増加が見られた。これは染色体上に「傷」がたまっていることを意味していると考えられる。この結果はこれまでに得られているセントロメア破壊にともなって染色体が不安定化するという結果と一致する。さらに染色体末端の不安定化と染色体末端融合との関連を調べるために、染色体末端の不安定化が生じることで知られるテロメア保護タンパク質の変異株でセントロメア破壊実験を行った。その変異株では野生株よりも顕著に染色体融合が増加することが明らかとなった。加えて、染色体融合の頻度が増加する相同組換え関連因子の欠損株ではセントロメアの破壊なしに染色体末端が不安定化することを見出した。したがって、染色体融合が生じるまでの間に染色体分配異常と染色体不安定化が生じており、おそらくそれらが染色体融合の引き金となっているものと考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Structural & Molecular Biology
巻: vol.20 号: 12 ページ: 1397-1406
10.1038/nsmb.2697