研究課題/領域番号 |
12J00944
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
土木環境システム
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
澤田 和子 北里大学, 医療衛生学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2013年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | レチノイン酸受容体(RAR)アゴニスト / ヒトRAR / メダカRAR / 河川 / レチノイン酸受容体(RAR) / RARアゴニスト / RA類 / 4-oxo-RA類 / 活性汚泥 |
研究概要 |
レチノイン酸(RA)受容体(RAR)は核内受容体の一つであり、all-trans RAの結合を介して、脊椎動物の視覚や形態形成、発生、細胞分化など、多様な機能を制御している。一方、RARシグナルが過剰に発現されると、催奇形性作用をもたらすことが知られている。近年、北米や中国の水環境中において、RARアゴニストによる汚染が確認されている。これまでの既往研究ではヒトの受容体を用いた試験系により評価されており、水環境汚染によって直接的な影響を受けやすい水生生物に対するアゴニスト作用については不明である。同じ受容体であっても、生物種ごとにリガンドへの応答性や特異性等は異なることが予想されるため、RARアゴニスト汚染による水生生物への影響を明らかにするためには、水生生物の受容体を用いた試験系での評価を行うことが必要である。そこで本研究は、相模川水系において、河川水中のメダカおよびヒトRARに対するアゴニスト汚染の実態調査を行った。ヒトのRARに対してアゴニスト活性を示す化学物質は河川水中に時期や場所によらず普遍的に存在し、存在濃度は時期により変動する可能性が示唆された。この結果は、これまでに実施していた淀川水系における調査の結果と併せ、ヒトRARアゴニスト汚染は局所的なものではなく、日本の水環境中では普遍的にみられる可能性を指摘できたと言える。他方、メダカのRARに対してアゴニスト活性を示す化学物質は局所的に検出され、時期に依存しない、または複数存在する可能性が示された。これらの結果から、ヒトRARに作用し得るアゴニストがメダカRArに比べてより広範かつ高濃度に存在することが示唆された。本研究は、水生生物のRARを用いて調査を実施した世界では初めての報告であり、RARアゴニストによる水環境汚染における水生生物への生体影響およびリスク評価を行う上で非常に意義のある結果を見いだせた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、水環境中におけるRARアゴニスト汚染の実態については、ヒトのRARを用いた試験系によって評価されていた。本研究では、RARアゴニストによる水環境汚染により直接的な影響を受けやすい水生生物にタイ末うアゴニスト作用を評価するために、水生生物の受容体を用いた試験系での評価を行った。調査水域である相模川水系において、ヒトおよぶメダカのRARアゴニストによる汚染状況の一端を把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究により、相模川水系において、メダカRARアゴニストは局所的に検出されたのに対して、ヒトRARアゴニストは全調査地点において検出されたことから、ヒトRARに作用し得るアゴニストがメダカRARに比べてより広範かつ高濃度に存在することが示唆された。生物種の異なる受容体を用いた調査において、分布状況や時期変動が異なる傾向を示した原因として、受容体の応答性の違い、特異的に作用するRARアゴニストの存在が考えられる。また、複数のRARアゴニストやそれ以外の物質との相加・相乗作用の影響も考えられる。今後は、長期的にモニタリングを継続することにより、河川水中におけるヒトおよびメダカRARアゴニストの特徴を把握するとともに、原因物質の特定が最も重要な課題である。
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