研究概要 |
本研究費により研究代表者は,以前開発したガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)に資するデータ解析ソフトウェアAIoutputに系統誤差を排除するためのアルゴリズムを新たに搭載したAIoutput2を開発することで,高再現性データを取得するための基盤を構築した(投稿準備中).新ソフトウェアはさらに,データ解析結果の客観的な評価を可能にするアルゴリズム,さらには種々の統計解析を搭載しており,利便性・信頼性の向上が達成されている.また研究代表者は,データ解析だけでなくメタボロミクスのワークフロー全体を最適化することで,高再現性データを取得するためのメソッド開発にも取り組んだ.メタボロミクス研究では,生体試料の取得,前処理,分析,データ解析の各行程において誤差を含んでいる可能性があり,得られる解析結果及びその解釈は時として重大な間違いを引き起こす.研究代表者はこの問題に対してまず,研究室スケールにおいてSaccharomyces cerevisiaeのメタボローム情報を高再現性かつ高精度に取得可能なシステム開発に取り組んだ.当該研究では,出芽酵母を観測対象としたメタボロミクスを行う際の培養,クエンチング,分析,データ処理の各要素について特有の系統誤差を把握し,軽減することを主眼とした.培養については2回の継代作業を行うことで,菌体回収時の菌体の状況を一定に保つ工夫を行った.クエンチングについては,冷メタノールクエンチング,フィルターろ過法,水洗い法を行い,サンプルをGCIMS分析に供し,再現性を検討した.GC/MS分析においては,実験日間差,機差に基づく固有の系統誤差の発見と軽減を行った.一連の検討の結果,培養,クエンチング法,GC/MS分析条件の最適化に成功した(投稿準備中).
|