研究概要 |
本研究の目的は, 身体機能と身体組成情報に基づき, より要介護状態に近い虚弱高齢者をスクリーニングできる評価指標を開発することである. 本目的を達成するために以下の3つの研究課題を設定した. 1. 虚弱高齢者の身体機能の特徴の把握, 基本チェックリストの妥当性・有効性の検討, 2. 虚弱高齢者の身体機能と身体組成の関連性の検討, および身体組成の基準値(カットオフ値)の検討, 3. 身体機能と身体組成に基づく, 虚弱高齢者を抽出するためのスクリーニング指標の作成. 前年度までに課題1,2を終了し, 最終年度の本年度は課題3を遂行した. より要介護状態に近い虚弱高齢者をスクリーニングできる評価指標作成に用いる変数には, 身体機能面では, 虚弱化・要介護化と関連が深い筋力(等尺性膝伸展筋力)を, 身体組成面では筋量, 脂肪量の情報を用いた. 先行研究や本研究でもsarcopenic-obese(低筋量&肥満)が障害に対してリスクが高いことが明らかとなっている. 一方, dynapenia(低筋力)の方がsaarcopeniaよりもリスクが高いことが報告されている. そこで, 課題3では, sarcopenic-obese, dynapenic-obeseと要介護状態との関連から, より要介護状態に近い者をスクリーニングする指標を検討する. 加えて, 先行研究や本研究課題2で報告されているobese(肥満・脂肪過多)状態のみならず, lean(痩身・脂肪過小)状態も合わせて検討することとする. 痩身・脂肪過小状態は元来の虚弱の指標であり, 肥満・脂肪過多状態と同様に要介護状態と関連のあるものと考えられる. Sarcopenic-obese, dynapenic-obese, dynapenic-leanが要介護状態と関連しており, 評価指標として有効であることが示された. この中でdynapenic-obeseのオッズ比が6.24と最も高かったことから, より要介護状態に近い者を抽出するには, 筋力評価+脂肪量評価(dynapenic-obese)が有効である可能性が示唆された. 指標として用いる場合, その目安値(本サンプル3分位)は, 筋力(等尺性膝伸展筋力 : 14.1kg以下, 握力 : 18.8kg以下), 体脂肪率35.0%以上であった.
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