研究課題/領域番号 |
12J01043
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
ヨーロッパ文学(英文学を除く)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中野 芳彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2013年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | フランス / 19世紀 / 詩 / 旅行 / ユゴー / 風景 / 視覚 / リリスム |
研究概要 |
課題「ユゴーにおける旅の詩学 : 亡命以前の詩と旅行テキストとの書法における比較」に沿って研究に取り組み、引きつづき順調に進展した。 本年度は、ユゴーの詩と旅行テキストにおいて形づくられる「風景」への歴史的アプローチと、視覚における記憶の役割、そして社会的時間と個人の時間との対立について考察をすすめた。アナール派の歴史学者アラン・コルバンが指摘するように、風景の歴史を書くためには多様な学問を援用する必要がある。何を見つめるか、何を見つめるに値するものと考えるのか、人びとのこうした行動様式を規定するのは、同時代の学問や文化そして生活習慣といった価値体系全体だからである。 太古の時間という観念を導入することで人びとの自然への眼差しを大きく変容させたキュビエは、若いユゴーの称賛の対象であったにも関わらず、壮年期以降のユゴーからは、偏狭な科学的精神の象徴、科学と詩的想像力とを分離させた張本人として断罪されることになる。こうした意見の推移は、風景と時間とを前にしたユゴーの態度の変遷をそのまま反映している。アラン・コルバンが言及しているように、19世紀フランスでは場所が変わると時間まで変わったのであり、法律によってパリ時間がフランス全土に適用されたのは1891年のことに過ぎない。19世紀をとおして押し進められた「時間の統一」は、子どもの労働時間の制限といった政策の基礎になったことはよく知られている。政治家としても知られているユゴー自身、このような「時間の統一」に寄与した一人と見なして良いだろう。パリ時間という「標準」を積極的に受け入れる一方で、旅人としてのユゴーは、画一性とはほど遠い、各地にいびつなまま残された過去という時間を見っめようとする。社会的時間と旅人の時間とがはらむこうした矛盾が、ユゴーの描く風景や記憶そして詩においていかに解消され昇華されているのかを、本年度の後半では考察した。
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今後の研究の推進方策 |
(抄録なし)
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