研究課題
特別研究員奨励費
プロトン伝導性配位高分子に高圧を印加し、プロトン伝導度がどのように影響されるかを評価した。また、この配位高分子が示す固液相転移に着目し、液体・ガラス状態の構造についても評価した。高圧下でのプロトン伝導度の評価は、DIA型の油圧プレスに電極を取り付け、in situでインピーダンス測定が行える条件下で行なった。この結果、1 GPaから3 GPaまでの加圧でプロトン伝導度が急速に減少し、常圧に比べおよそ1000倍低くなることが分かった。この現象を解明するため、Spring-8にて高圧下での粉末X線回折測定を行ない、構造評価を行なった。この測定には川井型の圧力発生装置を用い、白色X線を光源として用いた。この結果、配位高分子は1 GPaの加圧で格子の圧縮と同時に結晶性の低下を示すことが明らかとなり、3 GPaでほぼ非晶質化することが分かった。これより、プロトン伝導度の大幅な減少は、圧力による構造の非晶質化と相関があることが分かった。配位高分子の固液相転移に関しては、まず異なる配位高分子の示す相転移挙動の比較を行ない、融解するための必要条件を検討した。その結果、融解する配位高分子に共通してみられる特徴として、構成要素の高いイオン性と、低い配向異方性が液体状態を安定化する鍵であることが見出された。前者は金属イオンと配位子のエンタルピー相互作用、後者は分子配向のエネルギー縮退によってエントロピー安定化を稼いでいる。固液相転移のメカニズムを明らかにするため、液体・ガラス状態の構造についても詳細な解析を行なった。液体状態については融点以上でのNMR測定を行ない、配位結合が動的に交換していることで液体としてのマクロな流動性が現れていることが分かった。ガラス状態についてはPDF解析を行ない、配位子による剛直な架橋構造が存在する、すなわち非晶質な配位高分子構造を保っていることが分かった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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