研究課題/領域番号 |
12J01200
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
高分子・繊維材料
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
前田 綾香 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2013年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | セルロース / 多糖 / セグメントサイズ / 光散乱 / Kuhn長 / レオロジー / 複屈折 / 水素結合 / 応力光学則 |
研究概要 |
セルロースはD-グルコース残基を構成単位とする直鎖上の天然多糖である。分子間に形成される強固な水素結合のため、セルロースは非常に難溶性であるが、近年、数種のイオン液体がセルロースを非常によく溶解させるという報告がなされ、粘弾性やNMR測定からその溶液特性が盛んに検討されている。セルロースをはじめとする多くの多糖高分子は、溶液中でその高次構造や分子間/分子内相互作用が特異的な性質を発現させている。したがって、このような構造および相互作用の詳細を解明することが多糖分子物性において重要であり、多糖の特異性を活かした新規材料としての応用研究にもっながる。前年度には動的粘弾性と複屈折測定から、分子鎖のダイナミクスに相関がある動的なセグメントサイズ(Rouseセグメントサイズ)を求めた。今年度の研究では、動的および静的光散乱測定により、イオン液体を溶媒としたセルロース溶液の静的(幾何学的)セグメントサイズを決定した。ここで得られる幾何学的なサイズである静的なセグメントサイズと前年に求めた動的セグメント長との相関関係を調べ、セルロースの分子特性を議論した。セルロース溶解性イオン液体の多くは粘度が高く、また、不純物による蛍光を発するものもあり、光/X線散乱測定には適していない。したがって、光散乱測定に適したセルロース溶解性イオン液体を模索し、実験系を確立した。溶媒系をさまざま検討した結果、対アニオンがメチル酸エステルのイオン液体が低粘度かつ不純物による蛍光をフィルターで除去することができると分かった。これにより、これまで、ほぼ成功例のなかったセルロース/イオン液体系の光散乱測定が可能になった。この溶媒系による光散乱測定手法の確立は、今後のイオン液体/セルロース溶液特性研究を促進すると考えられる。測定結果から、上記1で求めたRouseセグメントサイズと矛盾しないKuhn長(14nm)が得られた。この値は、半剛直性分子として知られるセルロース分子鎖の特性を反映している。セルロース/イオン液体系における光散乱法の適用は本研究が初めての成功例である。また、前年度からの研究結果である動的セグメントサイズについての知見から、セルロースの静的セグメントと動的セグメントはほぼ一致することが分かった。この関係性は従来の高分子溶液の動的セグメントサイズに関する知見とは異なり、本研究は、単にセルロースの物性評価にとどまらず、高分子科学の基礎科学の発展にも大きく寄与するものとなった。さらに、上記の解析をアミロースおよびプルランにも適用し、幾何学的構造と動的剛直性の関係を明らかにした。これら屈曲的多糖類はセルロースにおける静的/動的セグメントの関係性とは大きく異なった。これにより、本研究目的である多糖高分子の静的剛直性とダイナミクスの相関性に関して知見を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では動的セグメント長のみの評価にて多糖物性を評価する予定であったが、静的セグメント長の評価にも成功したため、多糖の構造を評価するという目的を予定を上回り十分評価できた。
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今後の研究の推進方策 |
セルロースについてはおおむね当初の目的を達成した。アミロース、プルランといったαグルカンについても大まかな知見は得られた。そこで、セルロース以外のβグルカン構造性多糖についても同様の評価を行い、多糖種について構造とダイナミクスについて系統的研究を行う。
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