研究課題
特別研究員奨励費
本研究の全容は、造網トビケラの ①営巣行動(ニッチ構築)の種内地理的変異および可塑性を調査し、その上で、②それらが及ぼす、河床の安定化・流下有機物量への影響、③底生動物群集への影響を、野外調査と操作実験を組み合わせ検証することを目的としている。2012年度、2013年度は、このうち①営巣行動の種内地理的変異の検出を試みた。日本全国の地質特性の異なる10河川で営巣行動の比較を行った結果、営巣位置が地域集団間で異なり、河床の礫の大きさによって規定されていることが明らかになった。2014年度は引き続き、①営巣行動の種内地理的変異を調べたところ、営巣位置以外に、網の強度も地域間で異なっており、生息河川の流量変動が大きい集団ほど、太く強い糸で網を張ることが明らかになった。この結果から、流量変動が高い場所の集団ほど、河床をかく乱に強い環境に改変することが期待された。そこで流路にトビケラを導入し、営巣させた後にかく乱を起こす実験を行ったところ、予想どおり、強い網を張る集団を導入した流路ほど、礫が流されにくくなるという結果が得られた。当初の研究計画では、このような河床安定化の違いが、群集構造にまで波及するかについてまで検証を行う予定であった。しかし、その検証にはトビケラと群集組成種のサイズやフェノロジーの条件を合わせる必要があり、遠く離れた地点間での検証が難しかった。しかし、最終年に滋賀県内の非常に近い2河川間でも安定化に違いがあることがわかったため、今後、群集への影響をその2河川間で検証できる足がかりは得ることができた。今後の継続研究によってさらなる発展が期待できる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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