研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、より複雑な計算を高速処理する情報処理装置の実現を目指し、Si結晶スピントロニクスデバイスで利用が要求されている重元素や遷移金属元素のドーピング層を実現するために、特異な表面ナノ構造をドーパント源として利用するドーピング法の開発が目的である。これまでに、Si (001)上に形成するBi原子細線をドーパント源としてSi結晶中に埋め込み、高温アニールを施すことでBi元素をSi結晶格子位置に置換させる、二段階からなるプロセスにより、重元素Biの高濃度δドーピング層を実現している。本年度の研究では、X線吸収微細構造法を用いて、埋め込まれたBi原子細線中のBi原子周辺の局所構造評価から、Bi・Si結合距離の決定に成功し、ドーパント源の初期構造を明らかとした。Si (001)上のBi・Si結合距離が2.8Åであることに対し、Si結晶中では2.63±0.02Åであり、Bi原子細線上にSi原子が堆積された際に、構造緩和が起こることを明らかとした。また、清浄なSi (001)表面上に形成するMn1次元鎖構造をドーパント源とした、磁性不純物元素Mnのドーピング法の開発を行った。構造評価から、シリサイド形成を抑制してSi結晶中にMn原子が埋め込まれ、急峻なδドーピング層を形成していることを明らかとした。さらに、高磁場中のキャリア輸送特性評価より、試料はp型半導体の特性を示すとともに特定の温度領域にて異常ホール効果と負の磁気抵抗効果を観測し、希薄磁性半導体として機能する可能性を示すことに成功した。以上の結果は、表面ナノ構造のドーパント源としての積極的な利用が、Si結晶スピントロニクスに必要とされるドーピング層実現に有効であることを示している。
(抄録なし)
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Japanese Journal of Applied Physics
巻: 51 号: 11S ページ: 11PE05-11PE05
10.1143/jjap.51.11pe05