研究課題
特別研究員奨励費
本年度はジアリールエテン誘導体のアリール環にドナー/アクセプター置換基を導入することによる効果を調べた。具体的にはドナー/アクセプター二置換ジアリールエテン誘導体の紫外可視吸収スペクトルに対する溶媒効果について量子化学的手法を用いて検討した。吸収スペクトルの計算には時間依存密度汎関数法を用い、溶媒効果はPCM法で取り入れた。その結果、チオフェン-O,O-ジオキシド環をもつジアリールエテン誘導体のアリール環に対してドナー/アクセプター置換基を導入することで、閉環体では可視光域の吸収帯の波長が溶媒極性に依存するソルバトクロミズムが見られたのに対し、開環体の紫外光領域の吸収帯の波長は溶媒極性に依存しないという、フォトクロミック反応を用いたソルバトクロミズムスイッチング分子の設計を達成した。また、これらドナー/アクセプター二置換ジアリールエテン誘導体の分子軌道を解析することにより、ジアリールエテン骨格やドナー/アクセプター置換基の間の軌道相互作用がソルバトクロミズムのスイッチング挙動に関係していることを明らかにし、軌道相関図に基づくソルバトクロミズムスイッチング分子の統一的な設計指針を見いだした。このような、ソルバトクロミズムスイッチング分子は、不均一な誘電環境中の分子の拡散や、溶媒和ダイナミクスを観測するプローブ分子に利用できると考えられる。本研究の成果は、フォトクロミック分子を用いたソルバトクロミズムスイッチング材料の研究分野の開拓に寄与すると期待される。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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