本研究では、金属中における内部酸化を応用して、透明または単結晶基板上へ、発光特性に優れた酸化亜鉛(ZnO)ナノ構造体を高密度に分散・配列させることを目指し、1. 内部酸化法により得られた酸化亜鉛粒子の発光特性評価と、2. 単結晶基板上への酸化亜鉛ナノ粒子の配列について研究を遂行した。 1. 内部酸化によりPd中に析出したZnOの発光特性を評価するため、まずは研究代表者の所属する研究室が保有する分光装置を用いて発光特性の評価を実施した。しかし、分光装置の励起光の輝度が低いため、明瞭な発光スペクトルを得ることができず、発光特性を評価することができなかった。他方、応用に向けて、より安価なNiを母相金属とし、Pd-Zn合金、Ag-Zn合金と同様の条件にて内部酸化した。TEMによる断面観察と走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察を行ったところ、ZnOは内部酸化粒子を形成せずに、母相表面に皮膜を形成していることが明らかとなった。このことから、内部酸化によりNi母相中にZnOを析出させるためには、合金組成あるいは酸化条件の最適化についての更なる検討が必要である。 2. 単結晶のアルミナ透明基板の(0001)面上へPd-Zn合金薄膜を成膜し、基板ごと700℃・1時間の条件で内部酸化をした。TEMにより断面観察を行ったところ、微細なZnO粒子が多数形成しているとともに、粗大なZnO粒子が形成している様子も観察された。粗大な粒子の形成について、SEMによる表面観察から、単結晶アルミナ基板上にPd-Zn合金膜が異なるバリアントをもって成膜されたためにΣ3対応粒界を形成し、同粒界上に粒界析出したものであることが明らかとなった。したがって、基板、基板表面の結晶面を含めたPd-Zn合金の単結晶薄膜の成膜条件の最適化を検討する必要性が示された。
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