研究実績の概要 |
平成26年度においては、「ポリマーの化学修飾と物性解析」を中心に実験を行った。化学反応性が高い不飽和結合に化学修飾を行うことにより、高機能性を有するポリマーの創出が可能であることが一般的に知られている。
具体的には、1.架橋反応を起こすため、thiol化合物として1,2-ethanedithiolを用いた。1,2-ethanedithiolは両末端にthiol基を有し、ポリマー内の不飽和結合と両末端のthiolがUV照射することで反応し、ポリマー鎖同士にネットワークが形成され、分子量の上昇やゲル化による物性の変化が見られた。2.carboxyl基の導入実験において、酸化剤であるKMnO4、相間移動触媒であるcrown etherを用い、不飽和結合にcarboxyl基化を起こし、chloroformに可溶であったポリマーが不溶化された。この現象から、carboxyl基の付加により、ポリマーの疎水性が弱まったことが分かった。3.分解性の変化を評価するため、修飾前の乳酸ベースポリマーに対し、異なる分解活性を持つ酵素をライブラリ化した。まず、修飾前の乳酸ベースポリマーを用い、土壌サンプルをスクリーニングし、分解菌の単離を行った。単離した分解菌から分解酵素を精製し、活性によるライブラリ化した。
平成26年度の研究では不飽和ユニットに対し、架橋化や官能基の付加を行うことにより、乳酸ベースポリマーの化学修飾に成功した。化学修飾により、新たな物理的性質が現れた。今後、様々な不飽和ユニット分率を有する乳酸ベースポリマーに対し、化学修飾の反応分率を調節し、更なる物理性質の制御が可能になった。また、分解酵素をライブラリ化したことにより、多種多様な化学修飾された乳酸ベースポリマーに対し、網羅的に分解性の変化を分析することができると考えている。
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