研究実績の概要 |
約2万個の遺伝子が含まれるヒトゲノムの解析には、遺伝子ターゲティング法が有効である。しかし、ヒト染色体は2倍体であるため、ゲノム上の遺伝子の役割を理解するためには両方の対立遺伝子を改変しなければならず、新たな技術が求められている。これまでに本研究では、ヒトブルーム遺伝子(BLM)の改変を通じて両対立遺伝子に変異を導入する技術の開発を試みてきたが、この遺伝子以外にも主に染色体分配に必要な遺伝子の改変も目標としている。そして、ヒトiPS細胞における多能性と分化に関連する遺伝子の理解へと応用したいと考えている。
昨年度は、単離したコンデンシンnon-SMCサブユニット変異体の表現型解析を行った。コンデンシンnon-SMCサブユニットの機能がどのような経路に関連するかを調べ、以下の結果を得た。1) non-SMCサブユニット温度感受性(ts)変異体は制限温度下で染色体凝縮および分配異常を示した。これは既存のSMCサブユニットcut3, cut14変異体の表現型と酷似していた。2) non-SMCサブユニット変異体とcut3-477, cut14-208変異体との遺伝的相互作用を確認した。3) 微小管重合阻害剤TBZに感受性の変異体は、TBZ存在下で染色体不均等分配を示した。TBZ感受性変異体と動原体タンパク質変異体との遺伝的相互作用を検出した。
分裂酵母は通常1倍体(半数体)ゲノムを維持して生きていますが、驚くことに、新しいcnd1, cnd3変異体は2倍体ゲノムをもち、細胞のサイズも大きくなっていることが判明しました。この結果から、コンデンシンHEATサブユニットはゲノムの倍数性を維持していることが強く示唆されます(Xu et al., PLoS One)。現在、コンデンシンがどのように倍数性維持に関与するのかを知るため、日夜研究に取り組んでいます。
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