研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、淡水藻類シャジクモの生態的2型をモデルに、分化をもたらした適応的な遺伝子を探索し、種分化の初期段階を生み出す原動力である生態的分化を分子レベルで明らかにすることである。成果は生物多様性を創出する分子基盤に理解を与え、また他の植物に比べて蓄積の非常に多くない車軸藻類の博物学的情報(分布、分類、系統など)にも貢献する。本研究では、自然選択検出のための多型解析を行うことにより、候補となる遺伝子領域を探索する。また、培養実験を行い2型間での生理的特性の違いを検出する。そして交雑実験により、遺伝子探索で得られた候補領域の遺伝型と生理的特性の相関を調査する。各実験には、主に新規に採集するシャジクモの集団を材料として供する。このため、日本全国の様々な水環境において材料収集を実施している。収集することができた187集団のサンプルのうち、33集団分についてそれぞれの単藻培養株を単離し、代表株として確立することに成功した。培養株ならびに天然株を用い、分光光度計による光合成色素組成の測定を行ったが、本研究では生態的2型間での有意な差異は確認できなかった。集団解析のために必要なDNAマーカー候補として、ESTデータよりマイクロサテライト領域を探索し、複数株を用いた多型スクリーニングを行った結果、39の多型領域が確認された。PCR増幅の multiplexing を行う効率化を計った結果、10セットのmultiplexingに成功した。これらについては論文投稿を準備中である。野外調査で蓄積された全国の車軸藻類の種分布データは、愛媛県と京都府のレッドデータブックで新設される車軸藻類の項に反映させ、種選定と執筆を行った。また、分布と保全に関して特に重要だと思われる希少種シラタマモについては、国立環境研究所に株を寄託すると共に、分布や形態に関する知見を論文発表する予定である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Phycological Research
巻: 印刷中
富士山研究(Mount Fuji Research)
巻: 8 ページ: 7-14
巻: (掲載確定)
藻類(Jouinal of Japanese Phycology)
巻: 61 ページ: 149-153
http://www.sci.kobe-u.ac.jp/news/2012/120713.htm