研究概要 |
新たなスピントロニクス応用材料として、Co_xFe_<4-x>NとCo_xMn_<4-x>Nに注目している。本年度は分子線エビタキシー法により、srTiO_3 (001)基板上に高品質な強磁性窒化物薄膜を作製し、X線磁気円二色性(XMCD)測定と内部転換電子メスバウアー(CEMS)測定を用いて、ユニットセル中の3d遷移金属原子の原子位置について評価した。 Co_xFe_<4-x>N薄膜のXMCD測定とCEMS測定の結果から、作製したCo_3FeN薄膜のFeおよびCo原子は、Fe_4NやCo_4Nのように、IサイトとIIサイトの両方に存在することがわかった。また、第一原理計算の結果から、IサイトにCo原子、IIサイトにFeおよびCo原子が存在する理想とは異なるCo_3FeNでは、フェルミ準位における状態密度のスピン分極率(P_D)が低下する予想となった。これまでに不明確であったCo_3FeN薄膜のCo-Feディスオーダーについて、実験により明らかとなったことは大きな進歩であり、P_Dの絶対値が大きいCo_3FeN薄膜の実現には、Co-Feディスオーダーの低減が必要と判明した。 XMCD測定による、Mn_4NおよびCO_<0.8>Mn_<3.2>N薄膜に対する元素選択磁化測定の結果では、角型性が良いヒステリシス曲線が得られ、明瞭な垂直磁気異方性を示せた。Co_<0.8>Mn_<3.2>N薄膜のMnL_<2,3>吸収端でのXMCDスペクトルは、Mn_4N薄膜のMnL_<2,3>吸収端よりもブロードなシグナルとなったことから、CO_<0.8>Mn_<3.2>N薄膜のMn原子は遍歴傾向が強いIIサイトに入りやすい傾向が示唆された。CoL_<2,3>吸収端では明瞭でシャープなXMCDスペクトルが得られたことから、Co原子は局在傾向が強いIサイトに入りやすい傾向が示唆された。新材料であるCo_xMn_<4-x>Nについても、基礎物性の理解が進んだといえる。
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