研究課題/領域番号 |
12J02209
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
芸術学・芸術史・芸術一般
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田ノ口 誠悟 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員DC2
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2013年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | ジャン・ジロドゥ / デモクラシー / 政治演劇 / 演出 / 演劇 / 大戦間期 / 知識人 / 文化社会学 / フランス |
研究概要 |
2013年度は、前半は論文執筆や海外での学会発表を行った。後半は、海外で出版されたフランス語の研究書への寄稿論文を執筆しつつ、これまで十分に行えていなかったパリ国立図書館でのジロドゥ戯曲上演資料の調査を行い、それを完了させた。 フランス語フランス文学会紀要に掲載された論文「演劇とデモクラシー」は、2012年度に行ったパリ国立図書館の上演資料研究をふまえた論考である。そこでは、ジャン・ジロドゥの演劇作品が同時期の知識人達の政治思想をそれまでになく喚起した理由を上演形式の独自性に求め、その「政治演劇」としての特徴を、処女戯曲『ジークフリート』の初演を例にとり分析した。研究の結果、この作品は同時代ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトの演劇がそうであるような、観客に所与のテーマに関して自発的な思考を促す構造をテクスト、演出の両面で持っていたことが明らかになった。そして最後には、そのような演劇形式が、民主主義的言論がかつてなく活発化した当時の社会的背景と強く結びついている可能性を指摘した。 5月にルーマニアで行われたジャン・ジロドゥ国際学会での口頭発表「紙の上の政治演劇」も、上記の「ジロドゥ演劇が同時代の知識人の政治的議論を挑発しえたことを、演劇形式の研究から明らかにする」という目的にもとづいたものである。そこでは、ジロドゥの戯曲出版活動がただの文学的な試みではなく、上演の政治的側面に関する議論を観客に対し挑発する活動であった可能性を指摘した。交付申請書では、テクスト研究のみならず、上演やその受容も含めジロドゥ演劇が同時代の政治思想に対して発揮した影響力を分析するとした。上記の研究は、申請書内容を誠実に実行したものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国学会誌の論文一本、国際学会での発表一本、ヨーロッパで発行された研究書(フランス語)への寄稿一本と、研究成果としては、申請書に記載した予定通り進展したと考える。またパリ国立図書館での上演資料研究も予定通り進み、2013年10月に全てのアーカイブのデータベース化を終えた。研究は予定通り進展したものの、その過程で、これまでの知見を大きく書き換えるような予想外の発見が生まれなかったことは、高望み過ぎると知りながらも悔やまれるところである。しかし、手堅い成果を上げたと満足している。
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今後の研究の推進方策 |
これまではフランスの1930年代の演劇、特にジャン・ジロドゥを対象に、舞台芸術がデモクラシー(民主主義)体制において果たしうる政治的役割/可能性を探ってきた。その過程で、デモクラシーを政体として採用しているのはフランスだけではないので、他の国の演劇も研究対象に含み入れるべきではないかと考えた。具体的には、民主化以降の日本の演劇の政治的影響力を研究し、その結果をこれまでのフランスの例と比較し、より包括的な「舞台芸術とデモクラシーの関係性」に関する理論を生み出したいと考えている。この研究を行うためには、フランスのデモクラシーのみでなく、日本のデモクラシーに関する包括的な知識も必要になるので、それに関する資料の収集に力を入れようと思っている。
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