研究課題/領域番号 |
12J02343
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理(理論)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
須原 唯広 筑波大学, 数理物質系, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2014
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研究課題ステータス |
採択後辞退 (2012年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2012年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 原子核構造 / 中性子過剰核 / 分子動力学 / クラスター構造 / シェルモデル構造 |
研究概要 |
本研究の最大の研究目的は中性子過剰核におけるクラスター構造の出現機構の解明である。まず、これを達成するためには中性子過剰核に特有な構造変化を見つける必要がある。これを見つけるために申請者は中性子過剰なC同位体である^<16>Cの構造を研究した。これは以前に申請者が行い2つの特徴的な構造(非軸対称変形構造、リニアチェイン構造)を見つけた^<14>Cよりさらに中性子過剰な原子核であり、より余剰中性子の効果が現れ得る系である。実際の計算結果としては^<16>Cにおいても2つの興味深い構造(α+α+^8Heのガス的構造、リニアチェイン構造)が現れることが分かった。特にリニアチェイン構造は^<12>Be+α構造を持っていたが、この^<12>Beにとても興味深い特徴が見て取れた。普通、クラスター構造が現れる場合、それぞれのクラスターが基底状態になったものがもっとも低い状態として現れるが、このリニアチェイン構造中の^<12>Beは励起状態になっていた。これは安定核では見られなかった構造であり、このような構造が現れるメカニズムを解き明かすことは今後の中性子過剰核の研究を進める上で大きな知見を与える可能性が高い。 また、近年重要だと認識されてきた「クラスター構造とシェルモデル構造の競合」を簡単に記述できる手法、AQCM (Antisymmetrized Quasi-Cluster Model)の改良に成功した。AQCMは基本的にクラスター模型にパラメータを一つ導入することによって、クラスターの崩れを取り込めるように拡張した模型である。申請者の改良する前のAQCMは模型の拡張の仕方が不十分であり、シェルモデル構造の取り込みが不完全であったが、この問題を解決した。AQCMは中性子過剰核にも十分適用可能であり、「クラスター構造とシェルモデル構造の競合」の観点から中性子過剰核の研究を行なう新たな道を開いた重要な発展と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子過剰核の構造そのものの理解としては^<16>Cの研究を行ない、余剰中性子が存在する故に現れる2つの特徴的な構造が存在しうることが分かってきた、という発展があった。また、近年重要だと認識されてきた「クラスター構造とシェルモデル構造の競合」を簡単に記述できる手法を開発した。この手法は安定核のみならず中性子過剰核の記述もうまく行える手法であり、競合の観点から中性子過剰核を理解する新たな道を開いたといえ、これらは計画以上の進展であった。しかしながら予定していた4体以上のクラスター構造を取り込む、という目標は達成できておらず、これに関してはやや遅れている。これらを合わせて、おおむね順調に進展している、と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
まず^<16>Cで見つけた、中性子が存在する故に現れる2つの構造(α+α+^8Heのガス的構造、リニアチェイン構造)が発現するメカニズムを追求する。これらの特殊な構造を仮定した模型を用いて、様々なモードに対する安定性や余剰中性子の運動を詳細に調べることにより達成する。また、以前申請者が行った研究や他の研究者による成果も合わせると、余剰中性子が存在すると、C同位体においてはかなりグローバルにリニアチェイン構造が存在する可能性が示唆されるが、これを確認したい。これにはより中性子過剰なC同位体の研究を行う必要があるが、そのためには中性子の配位をかなり広く取り扱えるような模型を使わなくてはならない。そのために、現在用いている模型の余剰中性子部分の波動関数の記述を改良する。さらに相互作用も現在用いている現象論的なものからより現実的なものに取り替える必要がある。
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