研究概要 |
スピン偏極を利用して微弱磁場を測定する原子磁気センサ用のアルカリ金属蒸気セル(セル)を微細加工技術で実現するために, 高効率なアルカリ金属生成およびアルカリ金属を酸化させるアウトガスの低減に取り組んだ. 高効率なアルカリ金属生成に対して, 表面積の大きな微細構造を付与したタブレット状のアルミナまたはシリコン基材表面に, 300度程度でアルカリ金属を生成するアジ化バリウムと塩化カリウムの混合試薬を析出させた試料であるAMST (Alkali Metal Source Tablet)を提案した. さらに, AMSTの微細構造の表面積をパラメータとしたカリウム(K)の生成効率比較実験により, 表面積には最適値があること, 最適値は溶解度の異なる2種類の試薬の析出過程に起因する接触面積に依存することを明らかにした. アウトガスの低減に対して, セル構成部材の接合界面に形成したマイクロ流路を用いて雰囲気制御(アウトガス排気及びバッファガス導入)を行った後, ガラスフリットの加熱軟化によりマイクロ流路の気密封止を行う犠牲マイクロ流路気密封止技術を提案した. 雰囲気制御の観点から最適なマイクロ流路断面寸法を解析的に求め, 封止の観点から最適なマイクロ流路断面形状を数値解析により議論し, 犠牲マイクロ流路の設計指針を明らかにした. また, 高分解能ヘリウムリークテストを用いて, 犠牲マイクロ流路気密封止技術がセルに要求される気密性を実現出来ることを実証した. AMSTと犠牲マイクロ流路気密封止技術を用いてKセルを作製し, 吸光度測定によるKの蒸気密度評価から提案手法により高いアルカリ金属蒸気密度の長時間の維持が実現されることを実証した. 磁気ノイズは100Hzにおいて約50pT/Hz^<1/2>であり高感度磁気計測への応用可能性を示した.
|