研究概要 |
背景と目的 マクロファージ(MΦ)は、その活性化の様式からM1とM2MΦに分類されることが近年報告されている。M1MΦは、Th1細胞と相互作用し、細胞性免疫や組織障害に関わり、M2MΦは、Th2細胞と相互作用し、液性免疫や創傷治癒に関わる。 ヒトがエイズウイルスに感染すると、インフルエンザ様症状を示す急性期、無症候である慢性期を経て、エイズを発症する。M1MΦは急性期に、M2MΦは慢性期からエイズ期の病態進行に関与するという仮説をもとに、M1MΦ、M2MΦにおけるエイズウイルスの挙動を明らかにし、MΦの活性化がエイズの病態進行にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とし、本研究を行っている。 研究実施状況 (1)In vitroにおけるM1/M2MΦの作出 ヒト末梢血およびアカゲザル末梢血から単球を分離し、M-CSFを用いてMΦを誘導した。MΦ誘導後、IFN-γまたはIL-4を用いて、MΦを活性化させ、M1およびM2MΦのマーカーの発現をqRT-PCRを用いて調べた。ヒト、サルともに、IFN-γで活性化させたMΦはM1の、IL-4で活性化させたMΦはM2のマーカーを発現していることが確認できた。 (2)M1/M2MΦにおけるエイズウイルスレセプター・コレセプター発現の解析 M1MΦ、M2MΦでは、どちらの方にエイズウイルスが感染しやすいかを明らかにするため、エイズウイルスのレセプターおよびコレセプターであるCD4,CXCR4,およびCCR5の発現量をqRT-PCRおよびFACSを行い比較解析した。どちらのMΦでもCD4,CXCR4,CCR5全ての発現が認められたが、M2MΦでは特にCXCR4の発現が増加していることが分かった。サルとヒトどちらのMΦでも、同様の結果が得られた。 (3)H1MΦ、M2MΦにおけるエイズウイルスの複製 ヒトM1およびM2MΦに、コレセプター指向性の異なるHIV-R5、R5×4,およびX4ウイルスを感染させ、ウイルス増殖を比較した。R5ウイルスは、M0(活性化させる前のMΦ)>M2>M1の順に、R5×4ウイルスはM2>M0>M1の順にウイルス増殖が減少した。R5×4ウイルスが膿MΦで高い増殖性を示したことは、CXCR4の発現がM2MΦで高くなっていたためであると考えられる。サルに感染するエイズウイルスSIVについても、サルのMΦにおいて同様の結果が得られた。 (4)M1MΦ、M2MΦの識別法の検討 個体内でのMΦの活性化状態を識別するため、FACSを用いてM1およびM2MΦの識別を試みた。活性化前と比べ、最も発現量の増加が認められた因子はM1MΦではCXCL9、M2MΦではCCL18であった。これらの因子は、ケモカインであるため、Intracellular staining(ICS)を行った。さらに条件検討が必要ではあるが、In vitroにおいて誘導したM1およびM2MΦは、CXCL9およびCCL18に対する抗体を用いて、識別できるのではないかと考えられる。
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